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アラビアのロレンス 1

 投稿者:マーク・レスター  投稿日:2008年11月24日(月)12時45分38秒
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  こんにちは、アラビアのロレンス のレビューを書いてみましたので、投稿させて頂きます。次回は 「天然コケッコー」 にチャレンジしてみようかと思います。



今作を鑑賞して

    【 開始30分における、空前絶後のパワー 】 と、

    【 ヒーローが狂い腐っていく、負のパワー 】

      この相反する2つの力に、ボクは完璧に捻じ伏せられていきました。



今作は、真っ黒な画面に壮麗でエキゾチックなテーマ音楽が流れる 漆黒の4分間
から始まっていきました。
そして、この漆黒の闇から開放された直後に、主人公はあっけなくも死んでいき、
次の葬儀の席においては、主人公の人生が早々と総括されていったのです。

葬儀の際の 「賛」 と 「否」 の評価から一筋縄ではいかない 「二面性」
が主人公であるロレンスなのだ、と腹をくくって鑑賞を始めた直後に

   【 開始30分における、空前絶後のパワー 】

               にボクは完全に呑み込まれていったのです。



全ては、極上の 「ジャンプカット」 から始まっていきました。

アラビア派遣が決まったカイロ軍司令部。上官のタバコに火を付けたマッチを
ロレンスが 「フッ」 と吹き消した刹那、映像は砂漠の日の出へと瞬間移動
をしていきました。

この 「ジャンプカット」 は、今作の主人公であるロレンスがイギリス支配の
カイロから離れ、全く違う価値観に支配されているアラビアの地に到達した事を、
直感的に訴えてきた素晴らしいカット繋ぎでした。

わかりやすく説明すると、イギリスという産業革命を成した国の管理下にいた
ロレンスが、

     その成果物の工業生産品たるマッチの

          「 火 (ひ)」

     を自ら吹き消けすことで

          「文明的な生活」 に終わりを告げ、

     荒大な砂漠に灼熱をもたらす

          「 陽 (ひ)」

     が昇っていくことで、ロレンスの全く違う人生が

          アラビアの地で始まった

 ことを観る者に訴求してきた、「大胆にして繊細なる ジャンプカット」
だったのです。
 そのダイナミックな転調に、ボクは大いなる 映画的興奮 を味わったのです。


 「文明」 から 「砂漠」 への、この素晴らしい瞬間移動に感動した直後、
実は、続く3カット目にもボクの心は大きく動かされていったのです。
 「 陽 (ひ) 」 によってアラビアへの移動を示唆した2カット目の次には、
アラビアに来たロレンスの表情をストレートに訴求してくるはずと、見切った
直後に提示されたのが、予想だにしなかった

    「超ロングショットによる極小サイズのロレンス」

                            だったのです。

砂漠の造形美の遥か向こうにラクダに乗った豆粒のように小さい2つの影が
現れるのですが、驚くことに、こんなにも小さい存在である彼らの姿を
しっかりと視認することができたのです。
恐らく、砂漠という極端に単純化された舞台であったからこそ、人物を極端な
ロングショットの微小なサイズで捉えてもその存在感を十分に訴求することが
できたのでしょう。そして、デビッド・リーン監督がこの

    砂漠特有の表現手法

に行き着き、砂漠の悠久美とそこに飲み込まれそうにいる人物の存在感を
同一カット上で提示してきたことに、またまた感動してしまった
というわけなのです。
(約10分後にもこの手法は再度登場し、とてつもなく大きな 映画的興奮
を創出してくることになります。)

そして この 「大胆にして繊細なる ジャンプカット」
                  (1カット目と2カット目) と、

       「超ロングショットによる極小サイズのロレンス」
                  (3カット目)を多面的に輝かせたのが

       壮麗にしてエキゾチックなテーマ音楽
                            だったのです。

「大胆にして繊細なる ジャンプカット」 の2カット目、「 陽 (ひ) 」
のシーンから準備を始め、3カット目 「超ロングショットによる極小サイズの
ロレンス」 が砂漠に初登場した瞬間をピークに、壮麗にしてエキゾチックな
テーマ音楽がボクをドップリと包み込んでいきました。

    視覚的で理性的な側面
                に感じ入っていたところに、音楽という

    聴覚的で情感的な要素
                によって感情までもが揺さぶられてしまった
                というわけなのです。

しかも、この音楽の絶大なる効果が偶発的なものではなく、デビッド・リーン監督
による計算しつくされた演出だったことに気づき、今作の計り知れない奥深さに
驚いてしまったのです。
思い出して下さい。今作のオープニングを。漆黒の4分間を。
彼は視覚を遮断した状態で開始4分間もの間、このメインテーマを強制的に
インプットし続けてきたのです。
当初、漆黒の4分間に戸惑い、反発の感情すら抱いてしまったボクですが、
このテーマ音楽は、そんな表層的な思惟のレベルよりもずっと心の奥底である

    無意識の領域に
               到達していたのです。

強制的な4分間によって無意識の領域に刷り込められたからこそ、
しかるべきタイミング(3カット目)でこのテーマ音楽が再投入された時、

    「反射」 に近い反応

でボクの感情のスイッチはONになっていったのです。
今まで経験してきた視覚的密度と共に、漆黒の闇の中で刷り込まれた
起爆装置が連動して、巨大な連鎖爆破が起きていったのです。
理性の面と感情の面への同時多発攻撃を受けて、あえなく感銘の奥底に
沈み込んでいったというわけなのです。


この珠玉の3カットをまとめてみますと

   1カット目 ‐ カイロにてマッチの「火」を消す
                    ‐ 画面からはみ出る程のアップ
                     ↓
            「大胆にして繊細なる ジャンプカット」
                     ↓
   2カット目 ‐ 砂漠に 「陽」が昇っていく
                    ‐ 砂漠の風景で移動の示唆

   3カット目 ‐ 砂漠と極小サイズのロレンス
                   ‐ 音楽で移動の確信
            (「超ロングショットによる極小サイズのロレンス」)

という段階を踏んで、英国支配のカイロから異国の地アラビアへ移行していった
ことを表現していたのです。
1カット目と2カット目で構成される、「大胆にして繊細なる ジャンプカット」
で暗示的に表現し、
3カット目の 「超ロングショットによる極小サイズのロレンス」 で
砂漠の特異性を打ち出す形でロレンスの移動を控えめに示し、そして、
テーマ音楽の盛り上げで、それを確信させてきたのです。
この珠玉の3カットには大胆な手法と思慮深い抑制が矢継ぎ早に登場し、
その凄まじい密度をボクは心ゆくまで堪能したのです。

(2に続く)

http://ouiaojg8.blog56.fc2.com/blog-entry-72.html

 
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