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続きです
やがて、今作の映画世界を推進していくための 「映画のルール」 が提示された次には、この 「映画のルール」 を駆使して成し得るべき、映画の到達目標点とも言える、
「主人公の目的」
が提示されていきました。
エヴァン は、失われた記憶を確認すめるために、13歳時にサイドミラー越しの別れを演じた幼馴染の ケイリー と7年ぶりに再会をしました。 ケイリー の父親によってなされた
7歳時の
《 3番目 ・ いかがわしい撮影 》
幼馴染の 妹ケイリー、兄トミーの家の中で、彼らの父親に
いかがわしいビデオ撮影をされる際に発生
の事実を確認したところ、彼女の封印していた悲しい記憶を呼び覚ましてしまったのでしょう。 結果的に彼女を自殺に追い込んでしまったのです。
ここで、 「記憶喪失ポイント」 の種まきに終始していた今作に、成し得るべき到達点である「主人公の目的」 が提示されていったのです。
それは、タイムリープという 「映画のルール」 を活用して過去に戻り、その過去を変えていくことで、命を落としてしまった
ケイリー を救うこと
だったのです。
当然のことながら エヴァン は ケイリー を自殺に追い詰めるほどの大きなトラウマを焼き付けた、7歳時の
《 3番目 ・ いかがわしい撮影 》
という 「記憶喪失ポイント」 に 戻って行くのです。そして、いかがわしい撮影をしようとする ケイリー の父親を一喝し、その行為を封印させたのです。
過去を変えた瞬間に、7歳時のその時点から エヴァン と ケイリー の今までとは違った人生が走馬灯のように提示され、夢から覚めたように、全く異なった20歳の エヴァン が始まっていたのです。
過去に戻ってトラウマを払拭させたことによって、幼馴染の ケイリー は、前回の人生での冴えないウエィトレスなんかではなく、華やかな女子大生としての人生を謳歌していたのです。 ここでオープニングに提示された
「 小さな蝶の羽ばたきが、地球の裏では台風を引き起こすこともある 」
の意味を実感することができるのです。
7歳の時に ケイリー の父親を一蹴し、いかがわしい撮影をさせなかった という
「小さな蝶のはばたき」 で、 ケイリー はキャピキャピの女子大生となり、エヴァン とナイスカップルというバラ色の人生へと、プラス方向の 「台風」 が吹き荒れてたのです。
しかし、今作はここで 「めでたし、めでたし」 の大団円を迎えるわけもなく、ここで マイナス要件としての
もう一つの 「映画のルール」
を突きつけてきたのです。
それは、「何度も過去を変えて不幸を取り除こうとしても、結局は誰かしら不幸に陥ってしまう」 という、興味深いストーリー展開だったのです。
先に紹介した、ストーリーをグイグイと前に進めていく 「タイムリープ」 を
【 ストーリー推進型 「映画のルール」 】
とするならば、
今回新たに提示された、誰かしら不幸に陥ってしまうという 「映画のルール」 は
【 振り出しに戻れ型 「映画のルール」 】
と言うことができるでしょう
タイムリープをして、過去を変えていく
【 ストーリー推進型 「映画のルール」 】 と
積み上げた物語をリセットする方向に持っていく
【 振り出しに戻れ型 「映画のルール」 】 が絡み合い、
そこに、7歳時と13歳時の 「記憶喪失ポイント」 が関与をしだして、 なんとも典雅な3重奏の調べを奏でるのです。
とボクはこの時点ではそんな映画体験ができることを真剣に期待をしていたのです......。
前述のように、ところどころに素晴らしい要素が散りばめられた今作ではありますが、それらを結びつけるディティールの数々が、ボクの期待をバッサリと裏切っていったのです。
この思いは、7歳時の
《 3番目 ・ いかがわしい撮影 》
を阻止しただけで、エヴァン と ケイリー のバラ色の 「第2の人生」 が始まっていくくだりから既に感じ始めていたのです。
何故なら、 《 いかがわしい撮影 》 という マイナスポイントを是正しても、時制的にその後にくる
《 4番目 ・ 精神障害の父親からの殺意 》
を始め、何よりも13歳時に遭遇した 重大な出来事、
《 5番目 ・ ダイナマイトによる甚大なるいたずら 》
粗雑な 兄トミー 主導で、他人の家の郵便受けを
ダイナマイトで吹き飛ばす甚大なるいたずらの最中に発生。
《 6番目 ・ 愛犬の焼き殺し 》
主人公 エヴァン と 妹ケイリー のキスに激高した
粗雑な 兄トミー が、エヴァン の愛犬を焼き殺す場面で発生。
という、2つの大きな傷跡を残した 「記憶喪失ポイント」 までもが、軽くスルーされていったことに、大きな違和感を感じてしまったからなのです。
ボクは 「時」 というものを
一瞬一瞬が絶え間なく積み上げられて、
緻密な関係性を築いた結果が
「今」 へと結実している、
連続的なもの
と思っているのですが、今作においては
7歳時の 《 3番目 》 とい1点 と20歳時の 「今」 。
この2点しか制作者の配慮がなされていない、
非常に薄っぺらい印象を持ってしまったのです。
7歳時のエヴァンの 「小さな蝶のはばたき」 が、13歳時のとてつもなく大きな2つの不幸までもをカバーする 「台風」 になったとでも言うのでしょうか?
少なくともボクには、そんな大きな効果が実感できる是正とは思えませんでした。
そしてボクの今作に対する期待が、残念ながら空振りに終わってしまうことを確信したのが、 「第2の人生」 において
【 振り出しに戻れ型 「映画のルール」 】
によって、エヴァン が犯罪人として投獄されてしまい、
その窮地から逃れるための
【 ストーリー推進型 「映画のルール」 】
を行使する方法にあったのです。
【 ストーリー推進型 「映画のルール」 】 を司る 日記帳 を奪われた、スリリングな奪還劇の中で、迫り来る攻撃者を瞬時でかわしながらの タイムリープ は大いにスリリングで、その展開を楽しみはしました。
でも、
「時間」 という概念を、
一つ一つの 「瞬間」 が、時間軸に沿って積み上げられた膨大な
「積み木構造」 である
と思い込み、 「記憶喪失ポイント」 の順列を意識してきた者としては、今回の移行がドサクサ紛れの無計画なタイムリープであったことに苛立ちを覚え、しかも、行き着いた先が、よりによって最後の 「記憶喪失ポイント」 となる
13歳時 《 6番目 ・ 愛犬の焼き殺し 》 であったことに、
大いに失望してしまったのです。
《 6番目 》 へと一気に移行してしまったということは、スルーされていった
《 4番目 ・ 精神障害の父親からの殺意 》 と
《 5番目 ・ ダイナマイトによる甚大なるいたずら 》 の
「記憶喪失ポイント」 に、 エヴァン は必ずこの後タイムリープをし、何らかの是正処置を行うことが容易に予測がついてきます。
そして 「時制的に新しい」 《 6番目 》 は、 「積み木構造」 の土台となるこの 《 4番目 》 や 《 5番目 》 で行われる是正によって、その様相を大きく変えてしまうことが予見できてしまっているのです。
ですから、そんな脆弱な 《 6番目 》 を、こんな早い順番に提示しても、
誰が真剣に観るというのだろうか !?
という疑問に苛まされてしまったのです。
やっぱり今作の制作陣は、 当該 「記憶喪失ポイント」 と 「現在」 という2つの 「時制」 にしか注意を払っていないようなのです。 少なくとも、
「時間」 という概念を、
一つ一つの 「瞬間」 が、時間軸に沿って積み上げられた膨大な
「積み木構造」
だなんて思ってないことだけは、確かなようです。
ボクは今作に対してもう少し
「時制」 を考慮した理論的な展開
を期待していたのです。
例えば、
《 3番目 ・ いかがわしい撮影 》 という 「記憶喪失ポイント」 から
【 ストーリー推進型 「映画のルール」 】 を開始して 「ケイリー の自殺」
を回避したのなら、そのアドバンテージを保持したまま、 新たに発生した
「エヴァン の投獄」 を回避するために、次の 「記憶喪失ポイント」 となる
《 4番目 ・ 精神障害の父親からの殺意 》 に移行。何らかの是正処置に
よって、「エヴァン の投獄」 を削除し、少しづつ 「主人公の目的」
(ケイリーや身近な者を救う) に近づけていくという展開を期待していたのです。
そして当然のことながら、ここでも、どうしても生じてしまう
【 振り出しに戻れ型 「映画のルール」 】 によって、時制的に次なる
《 5番目 ・ ダイナマイトによる甚大なるいたずら 》 に移行して
「ケイリー の自殺」 や 「エヴァン の投獄」 のリスクを制御しながら、
新たな元凶を削除する。 しかしそれでもまた、「主人公の目的」 は遂行できずに
やっと最後である次の
《 6番目 ・ 愛犬の焼き殺し 》 でほぼ「主人公の目的」 は達成する
という構造を期待をしたのです。
ついでに言うと、タイムリープは 《 3番目 》 という順番から始めていきましたので、まだタイムリープをしていない、そして 《 3番目 》 より 「古い時制」 となる、 「積み木構造」 の土台である
《 1番目 ・ 殺人の絵 》
授業中に発生。
「ナイフで人を刺し殺した絵」 を無意識のうちに書いていた
《 2番目 ・ キッチンでの包丁 》
自宅で発生。
キッチンで包丁を (殺意ありげに) 持っていた
への是正によって、今まで築き上げてきた 「新しい時制」 となる
《 3番目 》 〜 《 6番目 》 で得られた成果が揺らぎながら、思いも よらないラストが待ち受けているはず。
と 「是正の集積」 と 「突然の転調」 による珠玉の結末までを、密かに夢見ていたのです。
完結編は次に
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