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緋牡丹博徒 花札勝負 3

 投稿者:マーク・レスター  投稿日:2009年 7月 8日(水)22時30分5秒
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  忍耐に忍耐を重ねた末に、今作はとうとう

     悪玉一家への殴り込み  という
     カタルシス
               へとなだれ込んでいきます。

この流れは任侠映画におけるお約束の展開となっており、まるで水戸黄門における 「葵の印籠」 的な

     クライマックス終結方法   とも言えます、

この一番の見せ場に至って、突如としてその存在感を飛躍的に大きくしていった人物がいたのです。
それはシリーズの脇役的人物であり、今回は終盤になってやっと登場した 不死身の藤松 という存在だったのです。
彼は お竜さん の兄貴分である 道後の熊虎 の子分という立場ですが、悪玉一家に一人で殴りこむ お竜さん の気持ちを察して同行を申し出るのです。

たったこの1シークエンスだけで 不死身の藤松は、今作のゲストスターである 健さん を、ボクの心の中で大きく超えていってしまったのです。

雪降る中を一人、悪玉一家に殴りこみをかけようとする お竜さん に傘を差し出す 不死身の藤松 。

藤松 「叔父貴(自分の親分の兄弟分だから お竜さん をこう呼ぶのでしょう)、
    お供しまっせ。  (中略)  行くな 言われても行きまっせ。叔父貴 一人行
    かせて四国にのこのこ帰ってみなはれ、 わい、親分に絞め殺されますがな。」

と朗らかに、笑みさえ浮かべて言うのです。お竜さん をはじめ 健さん、そして アラカン親分 の主人公級の方々は勿論ですが、今作においては、不死身の藤松 や冒頭の 仁義の受け人 など、脇を固める存在までもが、

     奥床しく
             振舞っていくのです。

そして 不死身の藤松 が 「わい、親分に絞め殺されてますがな」 と殴りこみ同行の意志を告げ終わった瞬間、流れるんですよ。
何がって? 緋牡丹のお竜 のテーマソングが流れるんです。 あまりにも絶妙のタイミングだったものだから、背筋がブルッと振るえる感覚に襲われました。

雪降る中、お竜さん に傘を差しかけながら、テーマソングを従えて、殴りこみの道中をいく 不死身の藤松 を

      カッコイイ
               と心底思ったのです。

しかも、今作において相手を気遣う象徴として捉えた 「傘」 という小道具を持ちながらの道中ですからなおさらズルイ。

これでは 不死身の藤松 に食われてしまうと心配した瞬間、定石通りに今作のゲストスターである 健さん は、悪玉一家への殴りこみに、お竜さん達の助っ人として大立ち回りを演じていったのです。
よしよし、と鑑賞していくと、 あれ! あれ? 不死身の藤松 にポイントを持って行かれそうだから

     焦ったのでしょうか?

ゲストの 健さんが、シリーズ主人公の お竜さん を差し置いて、何と、今作の悪の象徴である悪玉親分を成敗してしまったのです。

この瞬間にボクは非常に残念な思いに打ちのめされていきました。
なぜなら、この瞬間に今作は 「緋牡丹博徒」 という独自の美学を持った任侠映画ではなくなってしまい、健さん が主人公を務めている 「昭和残侠伝」 や 「日本侠客伝」 という他の任侠シリーズに変容してしまったと感じたからなのです。

冒頭の お竜さんの 仁義のシーンで、そして、雨の鉄道橋の下で、アラカン親分受難の場面で感じていた今作の美徳である

     奥床しさ
            をかなぐり捨てて、

「俺が東映のドル箱スター。 高倉健 だ!」 と 「緋牡丹博徒」 の映画世界を乗っ取らんばかりの出しゃばりようには、正直、失望をしてしまったのです。

そして、健さん が悪玉親分を討ってしまったことによって生じる

    構造上の不手際も
               露呈されていったのです。

それは、この選択をしたことによって、不本意ながら悪玉親分によって刺客をやらされた 健さん の恨みのみが強調されてしまい、アラカン親分 の不幸や、本文では触れていませんが、一人殴りこんで死んでいった 受け人さん や 盲目の少女の母親である “ニセお竜” の無念 がどこかに行ってしまったと感じるところにあります。
彼らの気持ちを代弁してくれる

     唯一の存在

である お竜さん によって悪玉親分がトドメをさされなかければ、全ての恨みが未消化のままで、宙ぶらりんなエンディングを描いてしまうと言うのに、このような構造的とも言える感情の面での不整合が発生してしまったのです。

この行為は 助さん や 格さんが

     黄門様をないがしろにして
     「葵の印籠」 を勝手に掲げて、悪代官を懲らしめてしまったようなもの

                              といえるでしょう。

     うーん、しっくりこない。


様々な映画的興奮をもたらしてくれた今作ではありましたが、終盤にして突如として今まで積み上げて来た稀有な世界観を投げ打って、釈然としないままに終わりを告げていきました。
「あーもったいない! あの出しゃばりさえなかったら完璧だったのに」、と嘆いても仕方がないことですので、ボクの脳内では、悪玉親分を殺ったのは、今作の主人公 お竜さん であった。ということに変換しておいて、強引に納得をさせたのでした。



              今作を総括すると、


映像演出的には   【 ローアングルの深遠なる世界 】    に 狂喜し、

人物描写的には   【 奥床しさが漂う任侠映画であること 】 に 驚嘆し、

個人的には     【 加藤泰監督作品の共通項探し 】    に 興じた


                        素晴らしい映画体験となりました。



加藤泰監督作品で未見である

       シリーズ7作目  「緋牡丹博徒 お命頂戴します」 にも

                 アラカン親分 が出演をされていることですので、
                 機会があれば、「アラカン親分の受難」 が

       4たびに渡って繰り返されるのか?

そして、7作目 「緋牡丹博徒 お命頂戴します」 の旅人(たびにん) さんである 鶴田浩二氏 との間で交わされる であろう 男女の機微が、 「川」 がらみの場所で進行し、

        無垢なる 聖域(サンクチュアリ) を形成していくのか?

               について観察をしてみるのも、一興かな? と思いつつ
               今作のレビューを終えるのでした。


次回は 「おくりびと」 をアップさせていただきます。

http://ouiaojg8.blog56.fc2.com/blog-entry-93.html

 
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